Charlie Burgの『Live in Peter’s Attic』所収の「I Don’t Wanna Be Okay Without You」の歌詞の日本語訳が見当たらなかったので、和訳してみようと思います。とてもいい曲なので。
「I Don't Wanna Be Okay Without You」
君がいなくても大丈夫ではいたくない
I'm saying things I don't believe
僕は自分の信じていないことを口にする
And your love casts its shadow on the things I do
君の愛が僕のやることなすことに影を落としているんだ
And I can hear so clearly all the words I wish I'd said
言えていたら良かった言葉が全部はっきりと聞こえてくる
You're stuck in my head
君のことが頭から離れないんだ
But I only think of you
だけど僕は君のことだけを考えている
Will we be together soon?
そのうち僕らはひとつになれるの?
I'm thrown to the wayside
ほったらかしにされている僕
You're planted in my mind
僕の心には君が植え付けられている
But I don't wanna be okay without you
だけど僕は君がいなくても大丈夫ではいたくないんだ
Now I can't find the words to say
いま僕は言うべき言葉を見つけられないでいる
That'll be the perfect balance between loud and clear
はっきりと完璧に伝わるであろう言葉を
And I can hear so well, your lovely voice inside my head
それに頭の中では君の愛らしい声がよく聞こえるんだ、
Saying you love me
僕を愛してるという君の声がね
But I only think of you
だけど僕は君のことだけを考えている
Will we be together soon?
そのうち僕らはひとつになれるの?
I'm thrown to the wayside
ほったらかしにされている僕
You're planted in my mind
僕の心には君が植え付けられている
But I don't wanna be okay without you
だけど僕は君がいなくても大丈夫ではいたくないんだ
英単語について少々。
・cast a shadow:影を落とす
・I wish I’d said:「I’d」は「I had」で「今まで言っていた(ら良かった)」の仮定法過去
・stuck in:はまりこんで抜け出せない
・only:文脈?からyouにかかって「君だけを」と判断しました onlyの修飾は難しい
・wayside:道端 → fall by the wayside:挫折する
→be thrown to the wayside:無視される、蔑ろにする、放っておかれる
・loud and clear:はっきりと、明瞭に
←safe and sound:無事に のように、訳出の際に一つの単語にまとめられる熟語(safe 安全で sound 確実→無事に)。今回は「loud 大きくと clear はっきりの間の perfect balance 完璧なバランスをもつ言葉」という、本来は二つで一つの単語に訳す熟語を分解した表現だったので訳が難しかったです(そのニュアンスは訳出しませんでした)
こうやって訳してみると、ずっと仲良くしていた女の子にいざ告白したらフられてしまって、それをひきずっている未練タラタラな男の子の心情みたいな歌ですね、あくまで僕の解釈ですが。でもフられてすぐなんてみんなこんな気持ちだろうな、とも思います。僕はずっと仲良くしてた女の子に告白してフられたときはちょうどこんな気持ちでしたよ、はい。
その人の声が脳内再生余裕なくらい夢中になっていて、「いつかは一緒になれるのかな?」なんて希望を捨てずにいるも、なかば諦めるような、そんな失恋した当夜の気持ちを表している気がしました。似た表現でよく使用される「I wanna be with you(君と一緒にいたい)」「I don't wanna be without you(君と一緒にいない状態でいたくない→君と離れたくない)」ではなく「君がいなくても大丈夫ではいたくない」という表現も絶妙ですね。メロディーやCメロも相まって少し寂しいような儚い気持ちになる曲ですね。泣けます。
追記(2024/03/08)
・遠距離をしていたときにこの曲にハマってリピートしていたのですが、まさしく「付き合っているのに愛情を確かめられずに不安に思う心情」としてこの歌詞を理解することもできるな、と思いました。というかそう思っていてこの曲をリピっていたはずです。未練の解釈は今思うと違う気がします。
・YouTube動画が限定公開に変更されていたため別の動画リンクを新たに追加しました。
・僕が記事を投稿した半年後くらいにYouTubeで和訳動画を投稿している方がいらっしゃったのを今になって発見しました。
訳出の違いが比較できて面白いです。例えば…
・I'm saying things I don't believe
自分が「僕は自分の信じていないことを口にする」と訳しているのを
「僕は自分でも信じられないことを言ってる」とよりわかりやすく訳しています。
口語的にdon'tを「られない」と訳すアイディアがすごい。
・But I only think of you
自分が「だけど僕は君のことだけを考えている」と訳しているのを
「ただ君のことしか考えられない」と否定表現で訳しています。
onlyやalmostは実は否定なんだという英語教師の教えを思い出しました。
たしかにこちらの表現の方がわかりやすい。この方がButを訳出しなかったのはなぜだろう。
・Will we be together soon?
自分が「そのうち僕らはひとつになれるの?」と訳しているのを
「いずれ一緒になれるかな?」と口語的に訳しています。
自分はこの曲をフられた男の未練と捉えていたので不安そうな疑問文になっているけれど、前後の文脈関係なくふつうに訳すならこの「そのうち一緒になれますか?」になると思うので、こちらの「いずれ一緒になれるかな?」と可愛げのある訳の方がニュアンスとして近い気もします。なにしろ動画のタイトルに使われている大事なポイントですからね。
ここの訳出でだいぶ曲のイメージが変わるな……。
・I'm thrown to the wayside
自分が「ほったらかしにされている僕」と訳しているのを
「僕は道端に投げ捨てられた」と直訳しています。
ここは自分の方がわかりやすいんじゃないかなと思いつつも、比喩表現としてわざとそのまま訳す意図があったのかもしれません。
・You're planted in my mind
自分が「僕の心には君が植え付けられている」と訳しているのを
「君は僕の心の中に根強く残ってる」と訳しています。
これはthrown to the waysideの逆で、自分が比喩表現のニュアンスを残した訳にしたのに対してこの方はわかりやすく言い換えて訳しています。意味合いとしては同じながら、動詞plantedのニュアンスを「根強く」という副詞で拾っているのはお見事です。
・But I don't wanna be okay without you
自分が「だけど僕は君がいなくても大丈夫ではいたくないんだ」と訳したのを
「それでも、君がいなくても大丈夫だなんて思いたくないんだ」と訳しています。
日本語の特性を活かして無駄に説明口調にならないように主語を省いていますね。動詞beの訳出に自分はかなりこだわって「~でいたくない」としましたが、この方は「思いたくない」と結構思い切った訳にしているなと思いました。
okayを「大丈夫」と同じ語で訳していて嬉しかったです。
・Now I can't find the words to say
自分が「いま僕は言うべき言葉を見つけられないでいる」と訳しているのを
「今言える言葉が何も出てこないんだ」と訳しています。
toの訳が難しい。「言うべき」「言える」どちらも正しい気がするが、ふつうの言葉で訳すなら「言える」の方が相応しいかもしれないです。
findを「見つける」とそのまま訳した自分に対して「出てこない」という、直前の「言葉」とより良いコロケーションの単語を用いた訳をしています。
・That'll be the perfect balance between loud and clear
自分は「はっきりと完璧に伝わるであろう言葉を」と訳していますが、
「音量と鮮明さのバランスが完璧になって」と訳しています。loud and clearという熟語と、thatが前の文章のwordsにかかっていることを踏まえている点で、この部分に関しては自分の方がうまく訳せていると思います。
全体的に甘いラブソングに仕上がっている和訳となっている印象を抱きました。
同じ文章を違う人と和訳して比較できる機会なんて受験勉強くらいだと思うので、興味深い体験でした。動画の訳もぜひご覧ください。